失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「お姉ちゃん、結婚ってどういうことなの?」

 お世辞にも顔色がいいとは言えない妹が差し迫る形相で詰め寄ってくるので、つい一歩下がる。

 翌日、実家に行くと、妹は開口一番に聞いてきた。今日は、その件について妹に詳しく説明するため、私ひとりでに足を運んだのだ。あと、妹の様子を見に来るためでもある。
 
 光輝さんと結婚してからさまざまな名義変更に追われる中、光輝さんの職場に出さないとならない私の書類も意外と多かった。

 結婚の自由が認められている現代とはいえ、配偶者のあらゆることも把握しておかなければならない職業ってやっぱ特殊だし、大変だ。本人はもっと厳しい目を向けられているんだろうけれど。

「ちょっとお姉ちゃん、聞いている?」

 可南子の言葉に我に返る。

「き、聞いているよ。落ち着いて。可南子こそ、つわり大丈夫なの?」

 私の指摘に、妹は急にぐったりとした。まだ体がつらいのは事実だろう。

 先月、大林さんの息子と結婚するため実家に戻ってきた妹は、体調が優れず、ずっと気分が悪そうにしていた。その症状がまさか妊娠からくるものとは、本人だけでなく家族も予想外だった。

 ずいぶんと妹は戸惑っていたが、やがて私に頭を下げて、おなかの子をあきらめたくないと言ってきた。当然だ。けれど、大林さんの息子さんとの件があった。

 私が選ばれたら万事解決だ。そう思って奔走していたが、結婚した相手は親友の兄で、その彼がすべて実家の問題を解決した。

 一見喜ばしい事態だが、妹は私が大林さんの息子さんではないものの、家のために好きでもない相手と結婚したのではないかと疑っているのだ。
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