失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「いや、だってさ。女の子ひとりでこんなバーで酒飲んで、声をかけられるのを期待しているのかと」
あまりにも失礼な言い分に思わず反論しそうになる。
「それは、とんだ偏見だな」
ところが私が声を発する前に背後から低い男性の声が割って入ってきた。うしろを振り向き、予想外の人物がいて目を瞠る。
私が座っているのを差し引いても見上げるほど身長が高く、二重瞼のくっきりとした切れ長の目は、整った顔立ちも相まって睨まれているのかと勘違いしそうになるほど目力がある。
艶のある黒髪はワックスでしっかりと整えられ、放たれるオーラは年齢以上の威厳を感じる。スーツは張りと上品な艶のある仕立てで、質のよさは素人の私が一目見てもわかるほどだ。
バーテンダーが席を案内しようと近づくと、彼は口を開いて制した。
「彼女を迎えに来ただけです。チェックを」
彼女、というのが私をさすのだと、すぐに結びつかなかった。心臓が早鐘を打ちだす。だって、信じられない。どうして彼がここにいるの?
混乱する私に彼は一歩近づき、隣に座っているサラリーマンを厳しい目で見る。
「チャージの意味を知らないのか? 勝手に席を移動するのはマナー違反だ。一杯で長居するのも」
「は?」
唐突な指摘に、男性は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる。
「それから、女性に声をかける暇があるなら自分の子どもに電話のひとつでもするといい」
「な、なんで……」
男性はあきらかにうろたえ始める。私もわけがわからない。
あまりにも失礼な言い分に思わず反論しそうになる。
「それは、とんだ偏見だな」
ところが私が声を発する前に背後から低い男性の声が割って入ってきた。うしろを振り向き、予想外の人物がいて目を瞠る。
私が座っているのを差し引いても見上げるほど身長が高く、二重瞼のくっきりとした切れ長の目は、整った顔立ちも相まって睨まれているのかと勘違いしそうになるほど目力がある。
艶のある黒髪はワックスでしっかりと整えられ、放たれるオーラは年齢以上の威厳を感じる。スーツは張りと上品な艶のある仕立てで、質のよさは素人の私が一目見てもわかるほどだ。
バーテンダーが席を案内しようと近づくと、彼は口を開いて制した。
「彼女を迎えに来ただけです。チェックを」
彼女、というのが私をさすのだと、すぐに結びつかなかった。心臓が早鐘を打ちだす。だって、信じられない。どうして彼がここにいるの?
混乱する私に彼は一歩近づき、隣に座っているサラリーマンを厳しい目で見る。
「チャージの意味を知らないのか? 勝手に席を移動するのはマナー違反だ。一杯で長居するのも」
「は?」
唐突な指摘に、男性は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる。
「それから、女性に声をかける暇があるなら自分の子どもに電話のひとつでもするといい」
「な、なんで……」
男性はあきらかにうろたえ始める。私もわけがわからない。