失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 なんでも別れる間際に、相手に婚約者がいることがわかったらしい。別れ方もお世辞にもいいものではなかったそうだ。

 そのぶん、私や両親が支えるつもりだ。私の回答に妹は軽く微笑んだ。

「お姉ちゃん、昔から子ども好きだもんね。気持ちはうれしいけど、お姉ちゃんは自分の子どもを考えるのが先じゃない?」

 なにげない切り返しに固まる。結婚したら子どもについて考えるのは当然だ。私だって自分の子どもを夢見ていたから。

 でも……。

『手を出すつもりはない』

『俺も結婚していた方がなにかと都合がいいんだ』

 結婚したとはいえ、私たちは愛し合っているわけじゃない。光輝さんとは一緒に寝るけれど、本当にそれだけだ。

 スキンシップと呼べるものは、まるでない。寝室をともにするのも、結婚したという事実と夫婦らしくいるためなのだろう。

 光輝さんにとっては義務みたいなところもあるのかもしれない。

 夫婦として歩み寄っていたら、そのうち子どもを考える時がくるのかな? 想像がつかない。でも、そんな割りきった家庭で子どもを生んで育てるなんて……。

「お姉ちゃん?」

「あ、うん」

 妹の声で我に返る。だめだ、可南子に心配をかけるような真似をしたら。

 自分を戒めていると、妹がため息をつく。

「大丈夫?って聞いてもお姉ちゃんはきっと大丈夫って答えるんだよね。だから、旦那さんにはちゃんと弱音を吐いて甘えてね。そんな相手じゃないと私、認めないから!」

 力強く告げる可南子に小さくうなずいた。これでは、どちらが姉だかわからない。

「ありがとう。光輝さん、とっても優しいよ」

 嘘偽りない気持ちで答える。これだけはまぎれもない事実だ。
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