失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 実家を後にして、マンションへ向かう。

 引っ越して、職場からは遠くなったがもともと利便性のいい立地なのでとくに不便は感じていない。警察庁の場所など、光輝さんと結婚するまではあまり意識していなかったが、霞が関の合同庁舎にあると聞くと、彼が警察官というより国家公務員だと意識する。

 すごい人……なんだよね。

 対する私は本当にただの会社員だ。もちろん、仕事は好きだし誇りに思っている。

 結婚を報告した際の同僚の反応はさまざまだった。

『いいなー。新婚さん、うらやましい』

 結婚して十年になる先輩社員の反応に私は苦笑する。

『手続きや新しい生活に慣れるのに精いっぱいですよ』

『でも大好きな相手と毎日、一緒にいられるのはいいですね。私も早く結婚したい!』

 彼氏と同棲を考えている後輩の反応に、別の同僚はうなずく。

『しかも相手、警察官なんて固い職業だし、頼りになりそうだし言うことなしだね』

 その後、いろいろ相手について質問されたが、私はつくづく光輝さんのことをあまり知らないのだと実感した。

 それに……。

『警察官って厳しくて大変な職業なだけに、奥さんの存在は大きいと思うのよね。その点、山口さんは気がきくしお料理上手だし、絶対に旦那さん、幸せ者よ』

『旦那さんが自分にだけ甘えてくれるのっていいですよねー』

 そこから、それぞれ自分たちの相手の話になっていく。会話に参加していたものの私の心の中にはかすかな靄がかかっていた。

 私、光輝さんの役に立っているかな?
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