恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「……私たちの問題は私たちで解決します。もう一度お伝えしますが、あなたのお兄様とお付き合いする気はありません」


事を荒立てないよう、できるだけ穏やかに断るが、彼女は片眉を上げたのみだった。


「どのみち最後に傷つくのは長谷部さんですよ。先日兄が御社を訪問したそうですが、詳しいやり取りを藤宮副社長はご存知なんですか?」


「耳に入れる必要のない出来事で彼を煩わせるつもりはないから」


動揺から言葉遣いが崩れた私に、彼女がしてやったりと言わんばかりに口角を上げる。

五十嵐さんの指摘にきちんと反論できない自分が悔しくて情けない。


「私はあきらめません。絶対に藤宮副社長を手に入れますから」


「……彼はモノじゃないわ」


言い返した私を、五十嵐さんがきつく睨む。


「すいぶん余裕ですね」


そんなわけない。

婚約者であってもライバル会社同士だし、彼の役職を考えると迂闊に仕事内容を尋ねたりもできない。

婚約者の置かれている現状ひとつ知るのも、躊躇ってばかりだ。

彼がなぜ私を選んでくれたのか、今でも理由は不明だ。

彼の周囲には常に五十嵐さんのように魅力的な女性がたくさんいて、私はいつも戦々恐々としている。

自信なんてひとつもない。

あるのはただ純粋に彼を好きな気持ちだけだ。
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