恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「思い出した?」


髪を解放し、骨ばった指が私の顎を掬う。


「俺は眞玖を逃さないために帰国した」


突然の宣告に息を呑んだ私の唇が、柔らかいもので塞がれた。

あの日よりも強く押し当てられた唇の感触に、胸がきゅうっと締めつけられた。

長いまつ毛に縁取られた、伏し目がちの綺麗な目が真っすぐに私を見据える。


「……ずっと触れたかった」


そう言って、もう一度唇を重ねる。

信じがたい出来事に体から力が抜け、心臓が壊れそうな音を立てる。

長い両腕が腰に回され、逃がさないと言わんばかりに引き寄せられた。

角度を変え、何度も啄むように繰り返されるキスに心が翻弄される。


「もう逃がすつもりはない」


物騒な物言いに目を見張る。

唐突な再会と展開に理解が追いつかない。

その後も彼の口づけは止まらない。

頭の中が真っ白になって、足に力が入らなくなる。


「藤宮、くん……!」


せめてもの抵抗で胸を押すと、藤宮くんが私の下唇を軽く食んで、唇を解放した。


「……悪い、歯止めがきかなかった」


そう言って、彼は私を広い胸に改めて抱きこむ。


「なんで、こんな……急すぎる」


「俺はずっと考えていた。だからそのドレスを贈った」


色香のこもる眼差しに体が火照る。


「このドレスにペア以外の、なにか意味があるの?」


問いかける声が震える。


「藤宮家主催のパーティーで同色のものを身につけたふたりは、伴侶や婚約者だと周囲にみなされる」


迷いなく言い切る目は、真剣だった。
< 34 / 156 >

この作品をシェア

pagetop