恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
脳裏に少し前の周囲の不可解なざわめきがよぎる。


まさか、皆、この件を察していたから?


「う……そ」


思わず唇から零れた言葉が途切れる。

あまりの大それた事態に血の気が引く。


四年間、連絡すらろくに取り合わなかったのに?


ありえない。


彼と私では、立場も住む世界も違いすぎる。

いくら私がしつこく想っていたとしても、恋心だけでつきあえるような人じゃない。

この年になれば、嫌でも現実の厳しさを思い知る。


「本気」


「え……?」


「俺が傍にいたいと心から願うのは眞玖だけだ」


そっと私の額に彼の唇が優しく触れる。


「俺の婚約者になって」


私の迷いや心中をそっちのけで、口にする。


「眞玖はなにも心配せず、俺の傍で笑ってくれていたらいい」


戸惑う私に、すべてを察したかのような穏やかな眼差しを向ける。

なにか言わなきゃと思うのに、うまく言葉を発せない。

笑えるわけない。

大企業の御曹司が勝手に婚約者を決めていいはずがない。

唐突なうえに一方的すぎる。

そもそも私は守ってほしいんじゃない。


「このままここにいたいが、そろそろ呼ばれるだろうから戻ろう」


突然の出来事に混乱している私とは対照的に、冷静に促される。

私の体を自身に引き寄せ、こめかみにキスをして耳元でそっと囁く。


「早く覚悟を決めて。俺はあまり気が長くないから」


傲慢な台詞を残して、藤宮くんは扉を開ける。

そもそも私に選択肢を与えてくれているように思えない。


……これからどうすればいいんだろう。
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