恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
『――どうもしなくていいでしょ』


混乱したまま帰宅して親友に電話し、事の次第を話したところ、呆れたように言われた。


『どこに悩む要素があるの? キスされて非公式とはいえ、婚約者宣言されたんでしょ? 長年の片想いが実ってよかったじゃない』


「でも私の気持ちはなにも聞かずに、婚約者だなんておかしいでしょ」


『眞玖の気持ちを藤宮さんはお見通しだったんじゃないの? 眞玖にはそれくらい強引にしなくちゃ埒があかないと思ったのかもよ。立場とか、すぐ気にするでしょ?』


「でも……」


『憂い事は全部、キスされたときに伝えればよかったのに。なにやってるのよ』


「そんな余裕なかったの」


『仕事はあんなに完璧なのに、どれだけ恋愛スキルが低いのよ。今の連絡先は聞いたの?』


「……自宅に送ってくれたときに交換した」


正確には強引に交換させられた。


『あのね、藤宮の御曹司は知ってると思うけど、以前からものすごくモテるのよ。帰国が世間に知れたら縁談の嵐よ? しかも新副社長に就任したんでしょ?』


親友の耳の早さには舌を巻く。

確かに新社屋、新商品のお披露目等以外に、藤宮くんの新副社長就任の発表もあった。

帰国の件とともに近しい人以外は伏せられていたそうで、若く優秀な新副社長への注目は凄まじかった。

うちの専務もきっとその件は知っていたのだろう。

壇上で就任の挨拶をする藤宮くんの姿は堂々としていて、同い年とは到底思えなかった。
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