恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
そもそも飲料業界に興味があるのに、うちではなく宰の会社の入社試験を受けるなんて負けず嫌いもいいところだ。

なんで、好きな女とわざわざ張り合わなくちゃいけないのか理解に苦しむ。

しかも眞玖には短期間だったが彼氏もいた。

報告されたとき、頭が真っ白になり取り乱した。

皮肉にもこれが原因で、眞玖への強い恋心を自覚し、彼女の存在の大きさを痛感した。

同時に自分の想いをもう誤魔化せないと覚悟もした。

だが、現実は厳しい。

大切な女性の恋を応援したい一方で隣に立つのが自分ではないつらさに悩み苦しむ日々が続いていた。

結果として、眞玖が別れた後は二度と後悔しないように行動しようと誓った。


俺の実家はそれなりの規模の会社を経営している。

後継ぎという立場を疎ましく、負担に感じているわけではない。

むしろその肩書に負けないよう、先祖代々が守り抜いてきた会社をさらに発展させ、次代に引き継ぐ人間になりたいと願い生きて来た。

けれども一方で“できて当たり前”という周囲の過剰な期待には辟易していた。

そんな中、同じような立場で似たような悩みと葛藤を抱えている親友に出会えたのは僥倖だった。

眞玖との関係をいい加減に動かそうと考えていた矢先、俺の海外赴任が決まった。

真っ先に親友に報告、相談をした。


『――渡米する。このままでは俺の主張は聞き入れられそうにない。母にどこかの令嬢との縁談を無理やり用意される前に、向こうで実績を積んで戻ってくる』


『長谷部はどうするんだ?』


『アメリカで修業してくると伝えて、戻るまで会わない。親族や周囲にどこかの令嬢との縁談を用意される前に、向こうで実績を積んで戻ってくる』


今の俺ではどこかで足を掬おうとしている邪な輩から、彼女を守り切れない。

眞玖はただの友人だと周囲に認識させておいたほうが、万が一の危険を回避できるはずだ。

そもそも帰国予定も不明な状態で約束もなにもできない。
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