恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
一昨日から長い時間、抱き合ってお互いの体温を感じて過ごした。

泣きたくなるくらい幸せな時間だったが、帰国して初めての長い休みだったと聞き、申し訳なさが募った。

副社長に就任したばかりの彼にとって、今はとても大切な時期だ。

彼のこれまでの努力は私なりに理解しているし、私自身も仕事が好きで大切に思っている。

匡が仕事を優先するのは当然だし、なにより邪魔をしたくないのにうまく行動できずにいる。

自分の振るまいが、足を引っ張っていないか不安で堪らない。


「……匡にどう接すればいいか、迷ってばかりなの」


自分の恋愛スキルの低さに情けなくなる。


「眞玖がしたいようにすればいいの。恋人になったからなにか変えなければいけないなんてルールはない。むしろ友だちより近い距離になったんだから、甘えればいいでしょ」


「匡は女性にベタベタ甘えられるのが嫌いだったと思う」


遠い記憶を掘り起こしつつ、返答する。


「彼女と世間一般の女性との扱いは違うでしょ。眞玖は難しく考えすぎ。恋愛は理屈じゃないって言うでしょ……あら、もうこんな時間? 会議が始まるから戻るね。まったく、私にもどこかに素敵な王子様がいないかしら」


親友が腕時計を覗き込みながら独り言ちる。


「蘭は理想が高すぎ」


「ハイスペックな彼氏がいる人に言われたくない」


「狙って好きになったんじゃありません……でも匡って弱みとかあるのかな」


常に飄々としていて完璧なイメージしかない。


「……灯台下暗し、知らぬは本人ばかりってよく言ったものよね……」


蘭が胡乱な眼差しを向ける。


「え?」


「こっちの話。親友が恋焦がれる相手に大事にされているようで安心した」


そう言って、蘭は片手をひらひら振ってフロアを出て行った。
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