恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
小さくため息を吐き、もう一度ホワイトボードに目を向ける。

高見さんは取引先に向かっているし、営業課は今、ほとんどの人間が出払っている。

詳細な内容はわからないが、辻くんが帰社するまで代理として用件を聞いておこう。


「新見不動産の資料はある? 辻くんに連絡をして、先方に今日中に確認しておくべき事項、必要事項を聞いてちょうだい。彼が戻るまで私が対応するから」


「は、はい! すぐ」


バタバタと準備をし出した後輩の背中を見つめ、私も自身の作業を中断する。

パソコンの電源を切り、化粧室に向かう。

一応身だしなみをチェックし、辻くんからの確認事項に目を通して、応接室に向かった。

私が所属している営業課のすぐ上の階にある応接室に階段で向かう。

カツン、と鳴るヒール音に、少しずつ気持ちが切り替わる。

半開きになっている応接室の扉をノックし、声をかけて入室する。


「お待たせいたしまして申し訳ございません。現在、電車の遅延により辻の帰社が遅れております。ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。辻が戻りますまで私、長谷部にお話を伺わせていただけませんか」


部屋の中央に置かれたソファの前で軽く頭を下げる。


「それは大変ですね。長谷部さんのせいではありませんし、どうぞ頭を上げて下さい」


穏やかな男性の低い声が耳に届き、頭を上げる。

そこには、見覚えのある男性が立っていた。


「おや、あなたは……」


男性が綺麗な二重の目を軽く見開く。
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