恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
名前を耳にした瞬間、頭の中でカチリとパズルのピースがはまった気がした。

整った人目を惹く容姿はもとより、兄妹だと言われればふたりの雰囲気はとても似通っている。


「失礼を承知で伺います。藤宮副社長と長谷部さんはご婚約されているのですか?」


突然の踏み込んだ質問に、一瞬返答に窮する。


「失礼ながら私は以前まで、長谷部さんは峰岡専務とお付き合いされているのだと思っておりまして」


何度か噂を耳にしましたから、と穏やかに口にする。

いくらこの人が五十嵐不動産の御曹司とはいえ、今は新見不動産の社員だ。

しかも私が担当する取引先ではなく、さらにこの状況下で私的な話をするのは憚られる。

ましてや匡とは正式に婚約しているわけじゃない。


「婚約についてはこの場ではお答え出来かねます。峰岡専務とは上司と部下の関係で、噂は真実ではありません」


「大変失礼いたしました。それでは、この件について詳しく教えていただく時間をいただけませんか?」


五十嵐さんの意外な返答に困惑し、なんとなく警戒心を抱いて見つめ返す。


「お話しておきたい件があるんです。妹からあなたについて伺っていると申し上げましたよね? 妹は藤宮副社長の婚約者候補なんですよ」


私の心中を見透かしたのか、さらりと告げられた言葉に息を呑んだ。

心臓が強い力で掴まれたかのように胸が痛い。


「双方の両親もこの婚姻にはずいぶん乗り気なのですが……なにも聞いておられませんか?」


困ったように眉尻を下げる、この人の本心がわからない。
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