恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
妹の、ひいては家業のため私を牽制したいの? 


もしくは匡に近づくなという警告?


相手の本心が読み取れない今、余計な情報を与えるわけにはいかない。

動揺する心を必死に抑え込み、言葉を選ぶ。


「申し訳ございませんがお答えしかねます。本日はお忙しいところ来社いただいておりますので、事業用地のお話をすすめてよろしいでしょうか」


グッと奥歯を噛みしめ、無理やり口角を上げる。

指が震えそうになるのを、力を入れて誤魔化す。

今は仕事のことだけ考えよう。


「さすが有能と評判の長谷部さんですね。益々あなたに興味をもちました」


「どうぞお座りになってください。辻に引き継ぎを受けた件ですが……」


賛辞らしきものを聞き流し、彼の真向かいに腰を下ろし、資料を広げる。


「今日こちらで再会するまではただの興味心だったのですが、気が変わりました。どうか私と結婚を前提にお付き合い願えませんか?」


唐突な求愛に、思わずバサリと資料を取り落とした。

五十嵐さんは柔和な表情で私を見つめていた。
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