恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「それに長谷部には言わないよう口止めされていたが……匡はここ二日ほど会社で徹夜している」


「え……?」


「それでも匡は僅かな時間を捻出して、長谷部に会いに行った」


この意味がわかるかと専務が畳みかけてくる。

脳裏に昨夜の匡の姿が浮かぶ。

大変な最中に来てくれたのを喜ぶ気持ちと、なぜ自身の状況を教えてくれなかったのかと相反する感情がせめぎあう。


恋人の現状をきちんと知らない私は、彼女だと、婚約者だと、胸を張って言えるだろうか?


情けなさと後悔で胸の奥がヒリヒリ痛む。


「私、なんで気づけなかったのか……」


「待て、自分を責めるな。匡は長谷部の性格をよく知っている。事実を伝えたら過剰に心配して、体を休めろと会うのを拒否するだろ?」


「当たり前じゃない!」


取り乱し、思わずいつも通りのくだけた口調に戻ってしまう。


「会いに来てくれるのは嬉しいけど、無理はしてほしくない。なにより匡の体調が心配だもの。どうして匡は専務にはなんでも話すのに、私には教えてくれないの?」


「彼女と友人の立ち位置は違うだろ。単純に匡は好きな女の前でカッコ悪い姿を見せたくないんだよ」


私の不満が伝わったのか、専務は小さく嘆息した。
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