隠れ御曹司の恋愛事情(改稿版)



「えーと。桃子さん。無茶をさせてしまって、すみません」

 ぼんやりと目を開けたわたしを見て、隣に居た彼は開口一番に謝った。
 昨夜、気絶するまで何度も抱かれたせいか、身体がだるく、動く気になれない。

(どこにそんな体力があるの……)

 絶倫にもほどがある。
 ーー体力の差だろうか?
 彼はどこか溌剌としていた。心なしか肌ツヤも良い。

「あ、喉乾いていません? 冷たいもの持ってきますよ」

 わたしの機嫌をとるようにして、彼が言う。

「いらない」

 短く返事をすれば、彼があからさまに狼狽していた。
 それよりも、もっと欲しい物があった。

「玲くん」
「はい」
「わたしの、鞄。持ってきてくれる?」
「はい!」


 立ち上がる体力がないから、彼に任せてしまった。
 ーー本当はもっと万全な体調の時に渡したかったんだけど。
 まぁ、仕方ないと諦める。
 戻ってきた玲くんにお礼を言って、欲しかった小箱を取り出す。
 ゆっくりとそれを開けると彼が息を呑む音が聞こえた。

「桃子さん!」

 感情の整理がつかないといった様子で彼の声が震える。
 わたしはそれに苦笑しながら、そっと彼に中身を見せる。

「婚約指輪に豪華なものを貰ったから、そのお返しに……結婚指輪はわたしが用意してみました」

 玲くんと結婚を決めてすぐの頃。彼が結婚情報雑誌を見せて、わたしに指輪の要望を聞いてきたことがあった。
 その時に彼の指輪の好みを聞いておいたのだ。

「どう? 驚いた?」

 人生最大のサプライズに胸がドキドキする。
 固まった彼に、もしかして失敗したのかと、身構える。
 けれど、次の瞬間。勢いよく彼が抱きついてきて、ぎゅうぎゅうに身体を密着させられる。

「どうしよう。凄く嬉しいです」

 震えた声は嬉しさの裏返しというものだろうか。

「花形玲さん。わたしと結婚してくれますか?」
「はい、もちろんです」


 間髪入れずに返事をされる。
 彼が心から喜んでいる。
 ーーそれが嬉しくて堪らない。


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