契約不倫~主人の子供を産んでもらえますか~
「立花さん、降られたの?」

「えっ?」

顔を上げると、上司である平塚部長が私の横に立っていた。

「ああ、お疲れ様です。そうなんです。傘を持っていなくて。」

「だったら、俺の傘を貸すよ。」

そう言って部長は、手に持っている傘を、私に渡してくれた。

「でも、部長はどうするんですか?」

「妻が迎えに来てくれるんだ。」

部長は笑顔で答えた。

「そうですか。いい奥さんですね。」

「そうなんだ。俺にはもったいないくらいの人だよ。」

その一言で、部長がどれだけ奥さんの事を愛しているかが、分かった。


「はい、どうぞ。」

部長はわざわざ傘を広げて、私に手渡してくれた。

その時に、指が部長の手に触れた。

「あっ、すみません。」

「大丈夫だよ。」
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