先生、それは取材ですか?
次の日、出かけていると偶然橘とばったり会った。

「お疲れさまです、先生」

「……その呼び方やめて」

「じゃあ、なんて呼べば?」

「……別に、普通に名前でいいし」

橘は少し驚いたような顔をして、すぐに微笑んだ。

「……わかりました。じゃあ、椎名先生」

――名前を呼ばれた瞬間、背筋がぞくっとした。

(……なんでだろ、なんか、やばい気がする)

橘の余裕そうな笑顔を見て、なぜか妙な緊張が走った。
< 5 / 118 >

この作品をシェア

pagetop