先生、それは取材ですか?
「……っ、冗談ばっかり言わないで」
私はそっぽを向きながら、なるべく冷静な声を作った。
「冗談?」
橘はにやっと笑って、机に肘をつく。
「先生、顔赤いですよ?」
「っ……! そ、そんなことない」
「じゃあ、試しに取材してみましょうか」
「な、なんでそうなるの!?」
私は慌てて身を引いた。心臓がうるさい。橘は本気じゃない、からかってるだけ。そう思うのに、こういうことをさらっと言ってくるのがずるい。
「別に無理にとは言いませんよ。ただ、先生が本気で作品のリアリティを追求するなら――」
「い、いい! しなくていいから!!」
思わず遮るように言うと、橘は肩をすくめた。
「そうですか。それならいいんですけど」