孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
紬がショッピングモールの待ち合わせ場所に着くと、すでにあかりと茜がいた。
2人はそれぞれアイスコーヒー片手に、見るからに浮き足立った表情でこちらに手を振っている。

「あー来た来た!おはよー、今日の主役ー」
あかりが声を弾ませて、わざとらしく茶化すように言う。

その隣で茜が、わざとらしく目元を拭くジェスチャーをしながら、

「氷のキングみたいな一条さんと、こんな初々しい紬が心を通わせる日が来るなんて……」
と、芝居がかった声色で言った。

「やめてよ、ほんとに」
紬は苦笑しながらも、嬉しさを隠しきれず、頬がふわっと緩んだ。

「さ、じゃあ行きましょうか、姫の変身タイム」
あかりの号令で、3人は館内のアパレルフロアへと向かった。

***

「これは?シフォン素材で、涼しげだし。」
あかりが手に取ったのは、ベージュのロングスカートに、白のノースリーブブラウス。

「え、可愛いけど……こんなの似合うかなあ」
紬は服の肩にかけられたハンガーごと鏡に当てて、もじもじしている。

「顔がいいから大丈夫。むしろシンプルな方が映えるのよ」
あかりが断言すると、茜も頷いた。

「うん、こういう清楚系でまとめるの、一条さん好きそう。余計な装飾もないし」

「さ、試着!どんどんいこ!」
背中を押されて、紬はフィッティングルームへ。

出てきた紬を見た瞬間――

「うわ、めっちゃいい!」
「紬、こういう格好もっとすべきだよ!」
2人が声を揃えて絶賛した。

「……そんなに? え、じゃあ、これにする?」

「まだ終わりじゃないわよ」
あかりは、紬の足元をじっと見てから、ため息混じりに言った。

「そのくたびれたぺたんこパンプス、完全にアウトね」

「あとさ、そのバッグ……何? 付録? なんかティッシュケース付きそうな素材してる」

紬は思わず笑ってしまった。
「もう、言いすぎ……」

でも、2人が真剣に自分のために考えてくれているのが伝わってきて、胸がじんわりとあたたかくなった。

靴売り場では、足が痛くなりにくいベージュのローヒールサンダルを選び、
バッグは小ぶりなレザートート、色はミントグリーンの涼しげなものに決まった。

「全体的に柔らかくて清潔感あって、夏の昼デートって感じ。いいじゃん」

茜が最終チェックのように紬をぐるりと見て、満足げに頷いた。

着替えを終え、紙袋を抱えた紬は、少し照れながらも、
「ありがとう……ほんとに、2人がいてくれて助かった」
と素直に言った。

「任せなさい、モテ女養成所・松井&中原支店へようこそよ」
あかりが胸を張る。

「次は恋愛相談もセットでね」
茜がウィンクした。

紬は笑って頷いた。
7月の陽射しが、館内に差し込み、外にはまぶしい夏が広がっていた――。
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