孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
隼人は、何も言わずに隣に座ったまま、ゆっくりと自分の手を差し出した。
掌を上に向けて。
——握るかどうかは、彼女が決めていい。
そう伝えるように、ただ静かにその手を差し出す。
すると紬は、そっと顔を上げ、自分の両腕を広げた。
何も言葉はいらなかった。
それは明確な、抱きしめてほしいという意思表示だった。
隼人はごく自然に、そっと彼女の方へ体を寄せ、片腕を優しく背中へ回す。
もう片方の腕で、包み込むように肩を支える。
柔らかな温もりが、胸元にふわりと触れた。
紬の呼吸が、ほんのわずかに乱れる。
しゃくり上げるほどではない。
けれど、その震えから伝わってくる。
きっと、前よりもずっと静かに——涙を流しているのだろう。
声も、嗚咽もない。ただ静かに、ぽたぽたと。
自分は、その涙を見るために、彼女を抱きしめているのか?
そんな問いが一瞬、心をよぎった。
——違う。
見たいんじゃない。
彼女が、自分の腕の中で、涙を流せるように。
痛みを、少しでも軽くできるように。
そのために、ここにいるのだ。
守らなければならない。
この腕の中にいる、大切な——
とても、とても大切な存在を。
隼人は、そっと紬の背に手を添えたまま、目を閉じた。
部屋の静寂に、ふたりの鼓動だけが、ゆっくりと、溶けていった。
掌を上に向けて。
——握るかどうかは、彼女が決めていい。
そう伝えるように、ただ静かにその手を差し出す。
すると紬は、そっと顔を上げ、自分の両腕を広げた。
何も言葉はいらなかった。
それは明確な、抱きしめてほしいという意思表示だった。
隼人はごく自然に、そっと彼女の方へ体を寄せ、片腕を優しく背中へ回す。
もう片方の腕で、包み込むように肩を支える。
柔らかな温もりが、胸元にふわりと触れた。
紬の呼吸が、ほんのわずかに乱れる。
しゃくり上げるほどではない。
けれど、その震えから伝わってくる。
きっと、前よりもずっと静かに——涙を流しているのだろう。
声も、嗚咽もない。ただ静かに、ぽたぽたと。
自分は、その涙を見るために、彼女を抱きしめているのか?
そんな問いが一瞬、心をよぎった。
——違う。
見たいんじゃない。
彼女が、自分の腕の中で、涙を流せるように。
痛みを、少しでも軽くできるように。
そのために、ここにいるのだ。
守らなければならない。
この腕の中にいる、大切な——
とても、とても大切な存在を。
隼人は、そっと紬の背に手を添えたまま、目を閉じた。
部屋の静寂に、ふたりの鼓動だけが、ゆっくりと、溶けていった。