孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
会議室に座った紬に対し、前回とは異なる柔らかな空気が流れていた。
けれど、最初に投げかけられたのは意外な問いだった。
「本日は、成瀬さんが岩崎社員に対してどのような処分を望まれているか、お聞かせいただきたいと思っています」
被害内容について聞かれると思っていた紬は、思わず眉を寄せた。
けれど、すぐに自分の気持ちを整理し、まっすぐ前を見て答えた。
「もう二度と、岩崎が私の近くに来ないよう、業務の配置を調整してください。
そしてもし、彼が再び同じようなことを繰り返すようであれば、最大限に厳しい処分を望みます」
人事担当者の一人が、深く頷きながら、その言葉を一言一句もらさずにキーボードに打ち込んでいるのが見えた。
紬の声は静かだったが、揺るぎのない決意がこもっていた。
ヒアリングの最後、担当者は丁寧な口調で言った。
「本日はご協力ありがとうございました。この件につきましては、社内に在籍している他の被害を訴えている方々にもヒアリングを進めております。状況が整理され次第、処分が検討される予定です」
その整然とした口ぶりに、紬はふと心の奥に冷たいざわめきを感じた。
(……なに、この手のひら返し)
気づけば、口が動いていた。
「……もし在籍者の方にヒアリングをされているのであれば、ひとつ申し上げておきたいことがあります」
担当者たちが顔を上げた。
「前回のヒアリングで、ある男性担当者から『あなたにも隙があったのではないか』という趣旨のことを言われました。
私はその言葉に深く傷つき、告発したこと自体を後悔しました」
そこまで言うと、ほんの一瞬、会議室の空気が止まった。
「それは明らかな二次被害です。
どうか……他の女性社員の方に、同じような思いをさせないでください」
担当者たちは言葉を失ったように目を伏せ、静かに頷いた。
(もしかして、岩崎は――)
紬の胸の奥を、ひやりと冷たい感情が這い上がる。
もし、他にも同じような被害を受けた人がいて、それを誰も止めなかったのだとしたら。
会社がそれを知りながら、黙認してきたのだとしたら。
紬は、背筋が凍る思いで目を閉じた。
そして心の中で、もう一度強く誓った。
(これ以上、私と同じ思いをする人が、どうか出ませんように)
けれど、最初に投げかけられたのは意外な問いだった。
「本日は、成瀬さんが岩崎社員に対してどのような処分を望まれているか、お聞かせいただきたいと思っています」
被害内容について聞かれると思っていた紬は、思わず眉を寄せた。
けれど、すぐに自分の気持ちを整理し、まっすぐ前を見て答えた。
「もう二度と、岩崎が私の近くに来ないよう、業務の配置を調整してください。
そしてもし、彼が再び同じようなことを繰り返すようであれば、最大限に厳しい処分を望みます」
人事担当者の一人が、深く頷きながら、その言葉を一言一句もらさずにキーボードに打ち込んでいるのが見えた。
紬の声は静かだったが、揺るぎのない決意がこもっていた。
ヒアリングの最後、担当者は丁寧な口調で言った。
「本日はご協力ありがとうございました。この件につきましては、社内に在籍している他の被害を訴えている方々にもヒアリングを進めております。状況が整理され次第、処分が検討される予定です」
その整然とした口ぶりに、紬はふと心の奥に冷たいざわめきを感じた。
(……なに、この手のひら返し)
気づけば、口が動いていた。
「……もし在籍者の方にヒアリングをされているのであれば、ひとつ申し上げておきたいことがあります」
担当者たちが顔を上げた。
「前回のヒアリングで、ある男性担当者から『あなたにも隙があったのではないか』という趣旨のことを言われました。
私はその言葉に深く傷つき、告発したこと自体を後悔しました」
そこまで言うと、ほんの一瞬、会議室の空気が止まった。
「それは明らかな二次被害です。
どうか……他の女性社員の方に、同じような思いをさせないでください」
担当者たちは言葉を失ったように目を伏せ、静かに頷いた。
(もしかして、岩崎は――)
紬の胸の奥を、ひやりと冷たい感情が這い上がる。
もし、他にも同じような被害を受けた人がいて、それを誰も止めなかったのだとしたら。
会社がそれを知りながら、黙認してきたのだとしたら。
紬は、背筋が凍る思いで目を閉じた。
そして心の中で、もう一度強く誓った。
(これ以上、私と同じ思いをする人が、どうか出ませんように)