孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
隼人は笑い転げていた体を起こし、正座のまま固まっている紬の背中にそっと腕を回した。
後ろからやさしく包み込むように抱きしめる。
ぎゅっと、力強く。

そのまま自分の足を崩して地べたに座り直すと、紬の身体を膝の間に収めるようにして、片方の肩に彼女の頭をそっともたせかけた。

視線が交差する。
見つめ合えば、胸の高鳴りはさらに激しくなる。

「ずっと……抱っこしてほしかったの?」

そう低く尋ねる隼人の声に、紬はぱっと目を逸らす。
「いや……ちがうの」

「違うの?」
そう繰り返しながら、隼人は紬の髪に指を滑らせ、やさしく撫でた。

「あのね……私、よくわかんないんだけど、隼人くんに……色々してほしいなって……」

視線を戻すこともできず、紬はそっと目を閉じながら言った。

「色々……?」
隼人は少し首を傾ける。

「うん……なんか……大人の人がするみたいな……」

彼の腕の中で小さな声で呟くその言葉に、隼人は一瞬息を止め、それから「ああ」と小さくつぶやいた。

「……抱いてほしいってこと?」

あまりにストレートに、恥ずかしげもなく言うものだから、
「ばっ、か……!」と、紬は真っ赤な顔のまま、彼の胸を小さく叩いた。

「ごめんごめん、だって……」

隼人はくすくすと笑いながら、
「初々しすぎて、ほんとにわからなかったよ」と言った。

言葉は笑っているけれど、その手は、抱きしめる力を少し強めていた。
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