孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
再び視線が絡んだ瞬間、隼人の瞳には、艶やかで愛おしさをたたえた光が宿っていた。
その奥に、小さく、確かに灯るような熱――まるで、燃えはじめた炎のようなものが、揺れていた。

「はや……」

名前を呼ぼうとした紬の唇は、その前に優しく塞がれる。
一度だけ触れるようなキスは、名残惜しそうに離れ、そしてまた引き寄せられる。
今度は少し深く、少し熱く。

紬の頬を、一筋の涙がつっと伝った。

そのぬくもりに気づいたのだろう。隼人はそっとキスを止め、紬の顔を覗き込む。

「……紬、怖くない?」

その声は、とても優しく、問いかけというより祈りのようだった。

紬は目を伏せたまま、小さく首を横に振った。

「怖いんじゃなくて……うれしくて」

その言葉を口にした瞬間、自分でも驚くほど心が震えた。
ずっと張っていたものが、音を立ててほどけていく――そんな感覚だった。

隼人は、ゆっくりと紬を抱きしめた。
何も言わず、ただその震えを包むように。静かに、確かに、紬をひとつに溶かしていこうとしていた。
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