孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
隼人は、言葉ではもう何も言わず、ただ求めるように両腕を紬の方へ差し伸べた。

まるで迷子の子どもが帰る場所を探すような、その動きに、紬はそっと応えた。

そっと身体を寄せて、両腕で包み込むように彼を抱きしめる。

隼人の顔が胸元にふれて、彼の呼吸が少しだけ乱れているのがわかる。

それでも紬は何も言わず、ただ優しく彼の背中をゆっくりとさすった。

一定のリズムで、静かに、何も求めずに。

まるで「大丈夫だよ」と言葉をかける代わりに、そのぬくもりですべてを包みこむように。

彼の心のざわめきを、痛みを、過去を、ひとつずつそっとなでおろすように――

紬は、ただひたすらに、安心を与え続けた。
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