孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
紬は、彼の手を包み込んだまま、ゆっくりと深く息を吸い込んだ。
胸の奥が熱くて、言葉を紡ぐことがこんなにも切実な行為になるなんて、思ってもみなかった。

それでも、彼に伝えなければと思った。
逃げずに、まっすぐに。

「……それなら、私は……あなたに何度でも愛を伝えるよ。
あなたのことを、何度だって好きになるし、伝えるし……。
それから、ご飯もちゃんと作って、一緒に食べて……。
あなたが知らなかった温かさを、少しずつでも一緒に感じていきたい」

涙が、ぽろりと落ちた。
だけど紬は、声を震わせずに話し続けた。
まるで、彼の命の輪郭を確かめるように。

「……あなたの痛みも、癒してあげたい。
あなたが見てきた世界がどんなにつらくても……もう一度一緒に歩いて、乗り越えていきたい。
あなたの弱さも、影も……私、ちゃんと見ていきたい。
ぜんぶ、あなたと一緒に……」

紬は泣きながら、でも静かに、必死に言葉を届けた。
たったひとりのその人に、心のすべてを差し出すように。

「……あなたの命が、どこにもこぼれ落ちないように。
私が、あなたを、ちゃんと繋ぎとめるから」

その声に、心の奥底を包まれたように、隼人の瞳に静かに涙が浮かんだ。

何度も眨いても拭いきれずに揺れていたそれは、紬が最後まで言い切った瞬間――

まぶたの上にたたえた光の粒が、静かに、ほろりと、こぼれ落ちた。
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