孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
ソファの上でくつろぎながら、紬はふと顔を上げて、隼人の顔を見つめた。
「ねぇ、なんか……私にしてほしいこと、ある?」

唐突な問いかけに、隼人は一瞬だけ目を丸くする。
その意図が“何か役に立ちたい”とか“支えになりたい”という類のものだとすぐに察しつつも、彼はわざと小さく「んー……」と考えるふりをした。

そして、少し得意げに、
「麻酔、かけ放題にしてほしい!」と、どや顔で答えた。

紬は吹き出す。
「そういうこと聞いてんじゃないのさ!」

笑いながら肩を軽く叩くと、隼人はくすっと笑って、ふいに真面目な顔をして紬の唇を見つめた。
「……だめ?麻酔」

その視線の熱に、紬の胸が少しだけ高鳴る。

「……今日だけだよ」

言い終えるか終えないかのうちに、隼人の手がそっと頬に添えられ、ゆっくりと唇が重なる。
それは優しくて、けれどしっかりと心を揺らす“麻酔”だった。

紬は、甘く溶けていく感覚の中で、心地よいぬくもりを確かに受け入れていた。
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