孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
紬は、隼人の唇が自分に近づいてくるのを感じて、ふっと目を見開いた。
「……はっ!」

突然、隼人の胸を両手で押して距離を取る。

「ま、麻酔かけられる!」

まるで危機回避ボタンを押すかのような勢いに、隼人は目を瞬かせたあと、吹き出した。
「……そんなに効いた?」

「効いたもなにも、あれ、反則だから!あんなのされたら、思考が…溶ける…」
紬は顔を真っ赤にして、クッションで顔を隠した。

隼人は笑いながら、そっとそのクッションを引き下ろして、目を覗き込む。
「じゃあ、今日は浅めの麻酔にしとくか」

「だ、だめっ、もう麻酔はストップ!」
紬がわたわたと手を振ると、隼人はわざと困ったような顔をする。

「困ったなあ…好きって伝えたかっただけなんだけどなあ…」
しれっと甘い言葉を口にする彼に、紬は再びぎゅっとクッションを抱きしめる。

「……ずるい、そういうの」

「知ってる」
隼人はそう言って、紬の頭をぽんと優しく撫でた。
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