孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
部屋を後にし、旅館の静けさを抜けると、清々しい朝の風が頬をかすめた。
そのまま鎌倉の町へと繰り出し、小町通りを抜けて、色づいた木々が並ぶ古刹へと向かう。
境内に広がる紅葉は、まるで風に染まる絵画のようで、ふたりの足を自然と緩めていた。
「見て、綺麗……」
紬が見上げるその先、燃えるような赤と黄金の葉が、陽の光を透かして優しく揺れている。
その景色に心を奪われるように、ふたりはしばらくその場に立ち尽くした。
隼人はそんな紬の横顔を静かに見つめ、ゆっくりと手を伸ばした。
重ねた手は、昨日までのどこかぎこちなさが取れて、今は自然で、どこか温度を持っていた。
「……手、冷たくない?」
小さな疑問に、紬は微笑みながら応じる。
「ううん、あったかい」
紬は隼人の手をぎゅっと握り返した。
その瞬間、言葉にしなくても伝わるものが、ふたりの間に確かに流れていた。
あの日、出会ってから少しずつ近づいて、たくさんの心を交わし、
今、ようやく本当の意味で隣に立てた気がした。
竹林を抜け、小さな茶屋で温かい甘酒を分け合いながら、ふたりは並んで紅葉の景色を眺めた。
言葉は少なくても、静けさが心地よく、すべてが満ちていた。
「――これからも、こんな風に歩いていけたらいい」
そう思ったのは、きっとどちらも同じだった。
風に舞う落葉の音が、季節の終わりと、ふたりの新しい始まりをそっと告げていた。
― 完 ―
そのまま鎌倉の町へと繰り出し、小町通りを抜けて、色づいた木々が並ぶ古刹へと向かう。
境内に広がる紅葉は、まるで風に染まる絵画のようで、ふたりの足を自然と緩めていた。
「見て、綺麗……」
紬が見上げるその先、燃えるような赤と黄金の葉が、陽の光を透かして優しく揺れている。
その景色に心を奪われるように、ふたりはしばらくその場に立ち尽くした。
隼人はそんな紬の横顔を静かに見つめ、ゆっくりと手を伸ばした。
重ねた手は、昨日までのどこかぎこちなさが取れて、今は自然で、どこか温度を持っていた。
「……手、冷たくない?」
小さな疑問に、紬は微笑みながら応じる。
「ううん、あったかい」
紬は隼人の手をぎゅっと握り返した。
その瞬間、言葉にしなくても伝わるものが、ふたりの間に確かに流れていた。
あの日、出会ってから少しずつ近づいて、たくさんの心を交わし、
今、ようやく本当の意味で隣に立てた気がした。
竹林を抜け、小さな茶屋で温かい甘酒を分け合いながら、ふたりは並んで紅葉の景色を眺めた。
言葉は少なくても、静けさが心地よく、すべてが満ちていた。
「――これからも、こんな風に歩いていけたらいい」
そう思ったのは、きっとどちらも同じだった。
風に舞う落葉の音が、季節の終わりと、ふたりの新しい始まりをそっと告げていた。
― 完 ―