策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす

「あの、私を庇ってくださったせいで、西澤さんのお仕事がやりにくくなったりしませんか?」

伊織の仕事相手は大使であるダニエルだろうが、その秘書のエリックとも関係が悪くなる事態は避けたいはずだ。あの時、かなり強い口調でエリックと言い合っていたのが気がかりだった。

千鶴の問いかけにやや気まずそうな顔をした伊織を見て、ぎくりと身体が強張る。

「もしかして、なにか問題が……」
「いえ、仕事上はなにも問題はありません。ただ――」
「ただ?」

食い気味に続きを促す千鶴に、彼は言いにくそうに口を開いた。

「あの時、咄嗟にあなたを私の婚約者だと言って彼を牽制してしまったんです」

思いがけない話に、目を丸くする。

『Ne la touche pas! C'est ma fiancée.(彼女に触るな! 俺の婚約者だ)』

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