旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「う……」

 うっすらと瞼を開く。
 背中にソファとは違う感触を覚え、私は眉を寄せた。自分が寝転がっているのはリビングのソファではなく、寝室のベッドの上だった。

(あれ、……私、いつ寝室に、)

 浮上しきれていない頭でぼんやり考える。適温に保たれた寝室の中、薄手の毛布から腕だけ出した状態で、私はベッドに横たわっていた。
 直後、額を押さえるために動かしかけた右手がなにかに包まれていると気づいた。漏れそうになった声を、私はなんとか喉の奥で押し殺す。

(……嘘)

 和永さんだった。
 私の手を握ったきり、和永さんはベッドに突っ伏している。化粧台の椅子をベッドの傍まで引っ張ってきたらしく、低い椅子に腰かけながら、彼はベッドに突っ伏して細い寝息を立てていた。

 霞がかかったようにぼうっとしていた頭が、ひと息に覚める。
 ……そうだった。ソファでうたた寝していたところを、帰ってきたこの人に運んでもらったのだ。熱で朦朧としていたものの、焦りを滲ませた彼に抱き上げられた記憶は確かに残っている。

 常夜灯が薄く室内を照らす中、握られた手を呆然と見つめる。
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