旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 体調を崩したからといってこの人に連絡を入れたことは、過去に一度もなかった。
 病弱な体質でもないし、この一年で体調を崩したこと自体あまりない。たまに風邪をひいたりはしたけれど、そういうときも、感染(うつ)さないようにさっさと部屋に戻って休む日がほとんどだった。

 ソファで寝ている私を見て、和永さんはどう思っただろう。驚いたよなと、利き手を包む長い指を見つめながら反省が過ぎる。
 私を抱き上げた彼の所作は迅速で、遠慮する暇もなかった。相当焦っている様子だった。
 今さら申し訳なくなる。いくら熱以外の症状がないからといって、リビングで寝落ちてしまうとは……運んでもらったときに口をついて出た言葉も、『ありがとうございます』ではなく『すみません』だった。

 それにしても、今は何時だろう。
 ソファに転がっていたときよりは幾分か動きやすい気がするけれど、まだ身体の至るところが熱っぽい。頭痛も残っている。

 あまり遅くまでこの人を付き合わせるわけにはいかない。
 無意識のうちにスマホを探して右手を動かしてから、いけない、と焦った。ベッドに突っ伏していた和永さんが、はっと顔を上げたからだ。

「あ……す、すみません、起こしてしまって」
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