旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 だから怖くなる。
 今から別れたくないと伝えたとして、あなたは本当に受け入れてくれる?
 それとも離婚さえ回避できたら、あなたは元の、私に無関心なあなたに戻ってしまう?

 分からない。
 あなたの本心がどこにあるのか、私には、少しも。

「……指」
「ん?」
「冷たくて、気持ちいいです……」

 結局、碌なことが言えなかった。
 それでもあなたは傍で嬉しそうに笑っていて、乱れた感情はますますぐちゃぐちゃになる。

 私は、あなたのことを本当になにも知らない。
 分かりたいと思う。今さら遅いと諦めたがる自分に、気を抜くとすぐに期待を持たせたくなってしまう。

「そろそろまた横になったほうがいい」
「……和永さんも、もう寝たほうがいいですよ」
「君が寝たら寝る」
「ふふ。じゃあ早く寝なくちゃ……」

 頭がまともに回っていないからこそ軽口を返せた。笑うような声が聞こえてきたと同時に、すっかり忘れていた眠気がひと息に戻ってくる。
 まだ涙に濡れていた目を自分で拭った後、言われた通り再びベッドに横たわり、毛布をかけ直す。途端に意識がふわふわと霞み始め、私は睡魔に逆らうことなく瞼を下ろした。

 微睡(まどろ)みに身を委ねて間もなく、なにかが唇を掠めた気がした。
 けれどその正体までは、もう追いかけていられなかった。
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