旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 出世すれば激務も比較的収まってくるとは叔父から聞かされているけれど、和永さんからは仕事中心の生活を変える気はないとはっきり言われている。
 そんな人がわざわざ時間を作ってくれたあのデートは、やっぱりすごいことだったんだなと今さらながら思う。

 考えてみれば、結婚記念日もそうだった。
 そもそも勤務中に自分の携帯なんて持ち歩けないだろうに、あのとき彼は私の着信に気づいて電話を折り返してくれた。あれだって、私のために無理を押してくれた可能性が高い。しかもあれは、私が離婚を切り出す前のできごとだった。

 もしかして私は、自分で思っているよりも大切にされているのでは。
 それなら、離婚なんてやめにしてしまえば――もう何度も頭を過ぎっている楽観的な考えに、また流されそうになる。

(……でも)

 それを伝えた瞬間、じゃあ、とあっさり元の関係に戻ってしまったら?
 私はそれが怖い。期待を望まない、望まれたくもない彼に、あっさり手のひらを返されるかもしれないことが。

 看病してもらった夜から、もうずっと同じことばかり考えてしまっている。
 嫌だ。優しさも指の温かさも知ってしまった今から虚無の関係に戻るのは、私にとって、きっと離婚する以上につらいことだから。
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