旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「あの、珍しいですね、平日なのに……なにかあったんですか?」
「いや、今日はたまたま」

 手を放そうと試みながら尋ねたものの、むしろ手を握る力は強くなる。
 放したがっていることが伝わっているのか、完全に逆効果だ。なにをどうしても取られた手は外れず、最終的には指を絡められてしまったから、私はそっと抵抗を諦めた。

「この後の予定は?」
「ええと、バスに乗って家に帰ろうかと」
「奇遇だな。俺もだ」

 一緒に帰ろう、と誘われて笑いが零れる。

「ならお夕飯、今日はふたり分ですね」
「あ……と、それなんだが。良かったら一緒に作らないか?」
「え?」
「この間は手伝うどころか君の手間まで増やしただろう、あれからずっと気にしてるんだ。ぜひ挽回の機会をいただきたく」

 目を逸らされ、さらには途中から敬語交じりに伝えられる。
 気にしてたんだ、と私はまた笑ってしまう。

「あんな青い顔してた人に手伝わせられませんよ。というか和永さんってお料理できるんですか? あ、いやこれは別に舐めてかかっている主旨の発言ではなく」

 うっかり口をついて出た疑問を取り繕っていると、隣から吐息だけで笑うような声が聞こえてきた。ふと顔を上げた先で、いつしか私を見つめていた彼と目が合った。

「まぁ人並みには。もちろん君の腕には敵わないが」
< 118 / 244 >

この作品をシェア

pagetop