旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「えっ?」

 和永さんから電話だ。……和永さんから!? 電話!?
 非通知着信への不審感が一瞬で消え失せる。二、三秒ほどその場に立ち尽くしてから、こんな道端で固まってどうする、と慌てて端に移動した。
 早く出なければ、とあたふたしながら通話ボタンをタップする。

「も、もしもし」
『もしもし、俺だ。仕事は終わったか?』
「はい。今、帰り道……です」

 場所を訊かれ、ええと、と周囲を見回しながら町名を答えると、わずかな間が空いた後に返事があった。

『もしかして花屋の近くか?』
「……っ、そう、ですね」
『ああ、見つけた』

 花屋。その言葉が思いのほか胸に刺さり、返事にもたついてしまう。
 けれど、それよりも『見つけた』という続きの声に気を取られた。はっとして周囲を見回すと、こちらに向かってくるスーツ姿の男の人が目に留まる。

(……嘘)

 間違いない。
 和永さんだ。

「良かった。ちょうど近くにいたから」

 傍まで歩み寄られて当然のように手を取られ、硬直してしまう。
 出先で、それも人目を憚らずこんなふうに触れられるなんて――板戸さんに見られてないよね、と通り過ぎた花屋の前を思わず振り返る。
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