旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 こんな感情を抱くのは初めてで、持て余してしまう。
 分からない。なにをどうすればいいのかも、どうするのが正しいのかも、少しも。

「……ん……」

 ときおり鼻から抜ける君の声は甘い。耳を掠めるたび、腰が溶けそうになる。
 すっぴんの唇は少し吸っただけでぽってり腫れて見え、その朱を目の当たりにした瞬間、頭の奥でぷつりと理性の切れる音がした。

 酔いとキスにすっかり力を奪われた君を抱え上げ、ソファから立ち上がる。
 向かった先は寝室だ。いつも夜の早い君が早めに寝室へ向かうかもしれないからと、君がシャワーを浴びている間につけておいたエアコンが、ひんやりと効いていて心地好い。

 お姫様のように大切に扱いたいのに、なにもかも思った通りに進まなくてもどかしい。

 宙を浮く感覚がそうさせたのか、短い移動の間、君は首にしがみついたきりだった。ベッドの上に下ろし、そのまま細い身体へ馬乗りに圧しかかってキスを再開する。
 うっとりと目を細めて唇を受け入れる君には、拒む様子が見えない。少しくらいそういう仕種を見せたほうがいいんじゃないのか、と逆にたしなめたくなってくる。

 わずかに残っていた理性も、もう完全に細切れだった。
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