旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 いつもそうだ。
 薫子の前でだけ、うまく自分をコントロールできなくなる。

「くそ……」

 自室のドアを慎重に閉めてから、呻くような声が漏れた。
 寝室を出るとき、ドアノブを握る指に力が入り、ドアを閉める音が思いのほか響いてしまった。彼女が眠りの深い性質《たち》で良かったと心底思う。

『騙されたまま結婚とかしなくて良かったです、私』
『おかげで和永さんにも会えました』

 ……仕事が手につかなくなりそうだ。
 一年前の自分だったら鼻で笑っている。なにひとつ期待をしていなかった、期待をしてほしくもなかったはずの相手に、俺はもう完全に骨抜きだ。
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