旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 もし言われていたら、それが嘘だったとしても、私はきっと喜んで受け入れた。
 そうやって雰囲気に呑まれて理性を溶かしたほうが、いっそ気楽だったのかもしれない。

 あの朝、起きたときにはあなたの姿はもう寝室のどこにもなかった。
 次にどんな顔をして会えばいいのかも分からないのに、寂しさだけははっきり輪郭を保って私を追い詰めて、結局その気持ちは今日までわずかにも揺らいでいない。

 ひとりで眠るベッドが、今まで以上に広く感じられる。そのたび指が勝手に肌を辿ってしまう。
 もう何度も同じことを繰り返している。自分の指の感触が、あなたが同じようにそこをなぞったときの記憶を掻き立てて、そのせいでお腹の奥が切なくなる。

 ……おかしくなってしまったみたいだ。
 好きな人にあんなふうに触れられたらこうなるに決まっていた。そんなことは、最初から分かっていたはずなのに。
< 148 / 244 >

この作品をシェア

pagetop