旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「薫子。ええと……なにか、あったの?」
お茶を振る舞われながら訊かれ、その訊き方までいつもの母らしくないなと感じる。
勢い任せに根掘り葉掘り事情を訊かれてもおかしくないのに、と思ったらつい笑ってしまった。笑っている場合では全然ないのだけれど。
「喧嘩した」
「喧嘩!? 和永さんと!?」
一転して声を張り上げた母の甲高い声が、耳に深く突き刺さる。
ほぼ同時に、ひゅう、と母が喉を鳴らして息を吸い込むさまを見てしまい、私は咄嗟にきつく目を瞑った。
来る。特大の金切り声が。
「比留川……ッ、あのクソ野郎と破談になったときすら怒れなかったあなたが!?」
お上品で通っている母らしからぬ〝クソ野郎〟という言葉に噴き出しそうになりながら、私は懐かしいその名前を聞き流す。
比留川。あの男の名を出されるたびに無駄に傷ついてしまうから、もうその名は話題に出さないでほしい。その約束を母から破ってきたのは、この四年で今が初めてだった。
「うん。でも」
狼狽える母の目をまっすぐに見つめる。
すると、母は途端に気まずそうに目を逸らした。
「お願い、お母さん。叔父さんには言わないで」
お茶を振る舞われながら訊かれ、その訊き方までいつもの母らしくないなと感じる。
勢い任せに根掘り葉掘り事情を訊かれてもおかしくないのに、と思ったらつい笑ってしまった。笑っている場合では全然ないのだけれど。
「喧嘩した」
「喧嘩!? 和永さんと!?」
一転して声を張り上げた母の甲高い声が、耳に深く突き刺さる。
ほぼ同時に、ひゅう、と母が喉を鳴らして息を吸い込むさまを見てしまい、私は咄嗟にきつく目を瞑った。
来る。特大の金切り声が。
「比留川……ッ、あのクソ野郎と破談になったときすら怒れなかったあなたが!?」
お上品で通っている母らしからぬ〝クソ野郎〟という言葉に噴き出しそうになりながら、私は懐かしいその名前を聞き流す。
比留川。あの男の名を出されるたびに無駄に傷ついてしまうから、もうその名は話題に出さないでほしい。その約束を母から破ってきたのは、この四年で今が初めてだった。
「うん。でも」
狼狽える母の目をまっすぐに見つめる。
すると、母は途端に気まずそうに目を逸らした。
「お願い、お母さん。叔父さんには言わないで」