旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「三年間同じクラスだったんです。成人してから偶然再会したんですけど本当になにもないです、たまに店で花買ってもらうくらいで」

 昔担当した事故の現場に供えてるみたいですよ、と続けられ、あ、と声が零れた。
 三年間同じクラスだった、中学時代の同級生――拍子抜けが過ぎて、思わず額を押さえてしまう。

「ていうか『やっぱり』って、なんか疑わしさ煽るようなことしてましたかね自分……?」

 振っていた手の動きを止めて尋ねてくる榛奈さんの声はかなり弱々しい。腰の低い彼女の仕種を前に、私は慌てて「いえそんなことは」と言いかけ、けれどその言葉は結局喉を通らなかった。
 こんな状況に置かれてしまった以上、もう正直に伝えたほうがいいかもしれない――不意にそんな気がしたのだ。

「……実は」

 グラスの中の氷が、カランと涼しげな音を立てて鳴る。
 私は私で、和永さんのことを知っている人を前にして、自分でも気づかないうちに進展の糸口を見出していたのかもしれなかった。
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