旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 私の事情を、叔父はこの人にどこまで伝えているのか。
 過去の失敗についても洗いざらい話してしまっているとしたら、いくら身内とはいえプライバシーの侵害だ。雑に取り扱われた気がして不快な気分になる。

「誠実……ですか」

 私の問いかけに返す能見さんの表情は、さっきまでとなにも変わらなかった。
 正も負もない、私個人に関心がなさそうな顔のままだ。

「不貞を働かないという意味でしたら応えられます。自分は仕事にしか関心がありませんので……本当にそれだけでいいのなら、ですが」

 最後のひと言に含みがある気がして息が詰まった。
 愛情を望まれても返せない、と改めて釘を刺されたような気がしたからだ。

(……でも)

 きゅ、と唇を噛み締める。

 都庁に勤める父の紹介で出会った男性と破談になってから、かれこれ三年が経つ。
 元々私を下に見がちな面はあったけれど、それも父の紹介だからと我慢していた――そんな我慢を結婚前から溜め込んでいる場合ではなかったと、今でこそ思う。
 ただ、当時の私は躍起になっていた。自分さえ耐えればすべてが丸く収まる、紹介してくれた父の顔に泥を塗るわけにはいかない、そもそも結婚相手に完璧を求めるのは無理がある、と。

 相手の男が、職場の女性を含めた複数人と浮気していたと発覚したのは、そんな矢先のことだった。
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