旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「お仕事の関係のお話を、和永さんは私にしないので」
「そっか。なんか能見らしいね、それ」
「……そう、なんでしょうか」
「うん。危ない仕事も多そうだし、あなたのこと、下手に巻き込みたくないんだろうなって思う」

 は、と震える息が漏れた。
 榛奈さんは、私とは根本的に異なる考え方をする人みたいだ。まるで馴染みのない解釈に揺さぶられ、瞬きすら忘れて彼女の顔に見入ってしまう。

 そういうふうに考えたことはなかった。けれど、榛奈さんの考えのほうがおそらく遥かに一般的だ。
 和永さんと出会った日から、あるいは比留川と破談になってから抱き続けてきた乾いた結婚観のせいか、榛奈さんの言葉はどれもこれも、私の耳にはひどく新鮮に届く。

「あたしと織田原さん、付き合ってるわけでもなんでもなくて、むしろずっと脈ナシだと思ってたのね。あたしがただ勝手に好きなだけっていうか……けど昨日、向こうから初めて『会いたい』って電話かかってきて」

 急に自分語りしてごめんね、今のうちに食べちゃってよ、と苦笑いした榛奈さんの頬は、少し――本当に少しだけ、さっきまでよりも赤く染まって見えた。
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