旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「他人のあたしが口挟むのかなり無粋だけど、今のふたりの気持ち、腹割って話してみたほうがいいと思うよ。お互いに後悔しないためにも」
「今の、気持ち……」
「うん。あなたもちゃんと話したいんじゃないの? そういう感じ、すごいする」

 優しい声だ。今日初めて顔を突き合せた人のそれとは思えないほど。
 和永さんの同級生なら、榛奈さんは五つ年上。そんな人と、このわずかな時間をともに過ごしただけなのに、なんだか恋の同志という感じが強くする。

 私たちは、この恋になんとか生き長らえてほしくて、ああでもないこうでもないと悩んで悩んで悩んで、苦しいのにこの悩みを引きずらずにはいられないまま生きている。
 例えば結婚なんてしなくても、人が幸せになるための手段はきっといくつもあって、なのに私たちはそれぞれ大切に抱えた恋を成就させたくて必死に藻掻いている。

「……はい」

 ここを訪れて初めて、自然と口角が上がった。

「ありがとうございます。そうしてみます」

 笑って告げると、榛奈さんも真剣な表情を緩ませ、やっと安心したように笑った。
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