旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
へらへらした口調は相変わらずだったけれど、声には明らかに余裕がない。
「……分かりました。でも母には連絡させてください、帰りが遅くなって心配してるはずですので」
「いいよ。ああ、車に乗ってからね」
車、と聞いてぞっとした。
今この場で話を聞けば済むと思っていたのに、まさか別の場所に移動する気なのか。
「あは、優しいね薫子ちゃん。四年前も今みたいに黙ってボクの言うこと聞いて、従順にしてくれてたら良かったのにね」
――そしたらボクだってこんなヤバいこと、しなくて済んだんだ。
手首を握って放さない比留川の指の爪が、ぎち、と皮膚に食い込んで、鋭い痛みを訴え始める。自分の手首の静脈が浮き上がって見え、くらりと眩暈がした。
「ついてきて」
猫撫で声で囁いた比留川が指さした先には、業務用と思しき飾り気のない軽バンが一台停まっている。
すでに相手を睨みつける気力さえ残っていない。
比留川の指がわずかにだけ緩む中、私は彼に合わせて震える足を踏み出すしかなかった。
「……分かりました。でも母には連絡させてください、帰りが遅くなって心配してるはずですので」
「いいよ。ああ、車に乗ってからね」
車、と聞いてぞっとした。
今この場で話を聞けば済むと思っていたのに、まさか別の場所に移動する気なのか。
「あは、優しいね薫子ちゃん。四年前も今みたいに黙ってボクの言うこと聞いて、従順にしてくれてたら良かったのにね」
――そしたらボクだってこんなヤバいこと、しなくて済んだんだ。
手首を握って放さない比留川の指の爪が、ぎち、と皮膚に食い込んで、鋭い痛みを訴え始める。自分の手首の静脈が浮き上がって見え、くらりと眩暈がした。
「ついてきて」
猫撫で声で囁いた比留川が指さした先には、業務用と思しき飾り気のない軽バンが一台停まっている。
すでに相手を睨みつける気力さえ残っていない。
比留川の指がわずかにだけ緩む中、私は彼に合わせて震える足を踏み出すしかなかった。