旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 けれど、この人はありのままの事情を伝えてくれた。
 そのことこそが、この人の誠実さを証明しているようにも感じる。

「……ひとつ伺いたいのですが」

 口を開きながら、不意に叔父の声が脳裏に蘇った。

『薫子の譲れない条件はなんだ?』

 譲れない条件。
 そう、誠実な人だ。浮気をしない、私を騙さない、そうするための嘘をつかない人。
 叔父だってわざわざ訊かなくても分かっていたと思う。

 その上で、叔父はこの人を私に紹介している。

「私の話、叔父からどこまで聞いていらっしゃいますか?」

 目が合ったきり、短い沈黙が舞い降りた。
 わずかに彼の視線が逸れる。

「……目に入れても痛くないほど大事な姪、と伺っています」

 抑揚のない声色は変わらなかったけれど、配慮を感じる口ぶりだった。
 おそらくこの人は叔父から、私の婚約破棄の経緯を聞いているのだろう。〝不貞〟という言葉がピンポイントで出てきたのもそのせいなのかもしれない。
< 20 / 244 >

この作品をシェア

pagetop