旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「はい、能見」
『お疲れ様です。報告のみ失礼します、ナンバー一致の車が首都高速三号線を北上中、次のICで検問入ります、シルバーの軽バン、車種は……』

 義母の取り乱した声の後に聞くせいか、淡々と報告する部下の声は彼女とはまるで真逆で、安堵すら抱かせてくる。
 だからか、別に伝える必要のないことが、つい口を滑った。

「比留川は人質を乗せてる、……俺の妻だ」
『は……えっ?』
「いや、なんでもない。今から俺も現場に向かう」

 ほとんど一方的に告げるだけ告げて通話を切る。
 人の声が消えた車の中、それまで気にも懸けずにいたエンジン音が妙に耳に痛い。きん、と強い耳鳴りが一層神経を逆撫でして、堪らず舌打ちをしてしまう。

 こんなふうに彼女を危険に晒す羽目になるくらいなら、なりふり構わずさっさと迎えに行けば良かった。
 だが、後悔してももう遅い。

「薫子……っ」

 どうか無事でいてほしい。
 祈る気持ちで、ハンドルを握り直した。
< 201 / 244 >

この作品をシェア

pagetop