旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「好きだ」
「っ、あ……」
「結婚記念日からずっと、なにをしてても君だけで頭がいっぱいで、おかしくなりそうだった」

 途方に暮れたような声で、それでいて切実な愛の告白以外のなににも聞こえなくて、見開いた目に浮かんだ涙の膜が厚みを増す。

 今、この世にはあなたと私ふたりしかいない――そんな錯覚に、見る間に溺れる。

「私も、好きです、和永さんが好き」
「……薫子」
「本当にごめんなさい、大変なことになって、でも」

 和永さんが追いかけてきてくれるとは思っていなかった。そんなことは無理だと諦めていた。
 そんなあなたが、私だけのために、まっすぐ私を助けにきてくれただなんて。

「怖い思いをさせて悪かった。今日迎えに行ったのも、後は所轄の担当に任せるつもりだったからだ、……いつもなら自分も動いた、けどあれが君を傷つけた張本人なのかもしれないと思うと、私怨を隠せる気がしなかった」

 私怨、とつい鸚鵡返ししてしまう。
 そんな感情的な言葉が、それも私絡みのことで和永さんの口から出るとは露ほども思っていなかったから、ひどく呆然とした呟きになる。
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