旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「悪い、余裕がない。一緒に入ってもいいなら」
「い、一緒って、そんなの……!」
「じゃあ後で頼む。本当に余裕がないんだ、一秒だって離れたくない」

 ……直球が過ぎる。
 愛のある結婚生活を期待してはいけなかった相手から、まさかこんなにも熱烈な愛情を注がれる日が来るなんて。

 見る間に顔が火照り、返す言葉を探す余裕すらなくなる。私がそうして躊躇している間にも、あなたは私の服を逃がしにかかってくるから、逃げ場が一切ない。
 なんでもいいから言い返さないと、と無理やり開いた口は、次の瞬間にはもうあなたの唇に塞がれてしまっていた。

「新しいベッド、買ったほうがいいな。ふたりだと狭い」

 重なった唇の隙間から独り言のように呟いたあなたの、言葉通りに余裕を欠いた顔は、羞恥の涙に歪んですぐに見えなくなってしまった。
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