旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 微笑んだあなたは、間を置かずに私の膝裏に腕を差し入れてくる。
 そのまま抱き上げられ、ひゃ、と間抜けな声が零れた。昨日も同じことをされたけれど、さすがにこれにはまだ慣れられない。こんなふうにお姫様のように抱えられるなんて、どうしたって胸がときめいてしまう。

「あ……ぅ、」

 熱情を孕んだ目で見つめられ、身体の芯が甘く震える。
 自分でもはっきりと分かる。昨日の夜、この身体にたっぷり教え込まれたあなたの愛を、私はまた求めているのだと。

「してるときの」
「……え?」
「蕩けてる君の顔、可愛すぎて何回でも見たくなる。また見せてくれ、今から」

 抱き上げられて寝室に運ばれる中、私は真っ赤な顔で、けれど確かに甘い期待に胸を膨らませながら、あなたの肩に顔を埋めて「はい」と返事を囁いた。



〈了〉
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