旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
私が母に孫の顔を見せてあげられる日は、今後も訪れない。
なぜなら。
(子供どころか、あの人は私に)
指一本触れていない。
結婚から一年が経った今も、ただの一度も。
母がそれを知ったら卒倒してしまいかねない。なにせ、両親は大恋愛の末に結婚したおしどり夫婦だ。
夫に迷惑がかかるような事情を漏らすつもりは一切ないけれど、ふとした折につい口が滑りそうで怖くなる。同じ理由で、母をこの新居に招くことは避けていた。
できれば、今後その話題は振ってこないでほしい。
前に同じ話をされたときよりもさらに強く、そう思ってしまう。
『ごめんだなんて……謝らないでよ。お母さんこそ悪かったわ、夫婦のことに口を挟んだりして』
ごめんね、と零した母はそれきり黙った。
これだけ意気消沈してくれたなら、次からはもう訊かれずに済むかもしれない。
「ううん、そんなことないよ。そろそろお夕飯の支度するから、またね」
『ああそうね、もうこんな時間……じゃあまたかけるわね』
母の声は、通話が終わる頃にはすっかり気遣わしげに変わっていた。
安堵と息苦しさを同時に覚え、私は溜息を落とす。孫の顔を見せてあげられないことを申し訳なく思っているのは本当だ。でも私には、母のその夢を叶えてはあげられない。
一日、また一日と、つらい気持ちは日を追うごとに膨らんでいく。
なぜなら。
(子供どころか、あの人は私に)
指一本触れていない。
結婚から一年が経った今も、ただの一度も。
母がそれを知ったら卒倒してしまいかねない。なにせ、両親は大恋愛の末に結婚したおしどり夫婦だ。
夫に迷惑がかかるような事情を漏らすつもりは一切ないけれど、ふとした折につい口が滑りそうで怖くなる。同じ理由で、母をこの新居に招くことは避けていた。
できれば、今後その話題は振ってこないでほしい。
前に同じ話をされたときよりもさらに強く、そう思ってしまう。
『ごめんだなんて……謝らないでよ。お母さんこそ悪かったわ、夫婦のことに口を挟んだりして』
ごめんね、と零した母はそれきり黙った。
これだけ意気消沈してくれたなら、次からはもう訊かれずに済むかもしれない。
「ううん、そんなことないよ。そろそろお夕飯の支度するから、またね」
『ああそうね、もうこんな時間……じゃあまたかけるわね』
母の声は、通話が終わる頃にはすっかり気遣わしげに変わっていた。
安堵と息苦しさを同時に覚え、私は溜息を落とす。孫の顔を見せてあげられないことを申し訳なく思っているのは本当だ。でも私には、母のその夢を叶えてはあげられない。
一日、また一日と、つらい気持ちは日を追うごとに膨らんでいく。